連載第1回/オートビルジポンプ
私が、ヤマハパスポート17CRを愛艇としていた時、台風情報が関東地域を襲ったことがあった。
船体カバーをかけて係留してあるものの雨が強く降ったりすると非常に心配である。
このタイプの船は、現在のボートのように二重構造の自動排水型ではなく1枚ハル構造なので雨の水が船内に直接入ってしまいビルジポンプを作動させないと数時間で沈んでしまう。
バスタブを浮かべているようなものである。
荒天の中、船を見に行くと案の定浸水し、バッテリーも水の中に没していた。
ビルジポンプは装備しているのだか、オートスイッチが付いていないために浸水が感知されず作動していなかった。
筋肉が痛くなるほどバケツで水を何十杯とかき出しながら「こんな苦労はいやだ、何とか対策はないものだろうか」と疲労困憊の中で考えた。
そこで登場したのがオートビルジポンプである。
オートビルジポンプには、セミオート仕様とフルオート仕様とがある。
前者は操作する人間が水を察知してスイッチを入れ、水がなくなるまでモーターが回転し負荷がなくなると自動的にストップするタイプで80年代に流行ったポンプである。
後者は主にフローティングスイッチが内蔵され水が浸入した場合フロート(浮き)が水を察知しポンプに通電する。
通常、浮きはカバーやストレーナーによって異物による誤作動を防いでいる。
フロートスイッチは、ポンプ内蔵タイプとスイッチセパレートタイプの2種類があり、最近の主流としてオールインワンのポンプ内蔵タイプがコンパクトで設置しやすく輸入艇の大半はこのタイプが標準装備されている。
船底形状によりセパレートタイプしか設置出来ない艇もある。
電流はバッテリーから直接とることが望ましい。
メインスイッチをカットした際にオートビルジの機能が停止しては意味がないからだ。
オートビルジがコンプリートされている船の場合、インストゥルメントパネル内に操作スイッチが設置されオート作動とマニュアル作動の選択が出来るようになっている。
マニュアルスイッチをオンにすれば、無条件にポンプが回る仕組みになっている。
ポンプは、船の大きさや保管の状態に比例して容量や数量を調節する必要がある。
25フィートクラスになるとアフト、ミッドの2箇所に設置されている場合が多い。
20フィート以上の船の場合、1分間/70L排出できる1100タイプがお薦めだ。
1100という数字は、時間あたりのガロン単位を意味する。1100で1時間/4200L弱である。
当然に500に比べて半分の時間で水を排出するということだ。あまり小さすぎるとモーターが加熱して破損の原因になるばかりか必要以上にバッテリーを消耗するので注意したい。
二重構造のボートは、自動排水機構を備えてあるので500タイプでも充分であると言える。
ジェットスキー等のウォータービーグルは、絶えず水の浸入があるので500タイプのオートスイッチ付を装着している艇をよく見かける。
エンジンに水は大敵で故障の原因の大半は水の浸入である。
最後に注意しなければいけないのは、バッテリー不足によるポンプの停止である。
20フィート未満の船で言えば通常65アンペア程度のバッテリーで数時間回るとそれでおしまい。
後はバスタブ状態になってしまう。バッテリー容量を充電できるソーラーチャージャー(太陽電池)を設置することで大半は解決できる。
出力11W以上のソーラーチャージャーでないと雨が多いときなど充分にチャージされず役に立たないのが私の経験である。
エンジンルームにおいてエンジンのオイルパンまで浸水したと仮定すると約数百リットルの水の量が想定できる。
ビルジポンプは、設置数1の場合は、エンジンの真下で一番低い位置に設置することが望ましい。
ポンプと給水口が一体型の設置は、水平でないと機能しないものもあるので板などで台座を作り斜めにならないように工夫する必要がある。
設置数2の場合は、1つはエンジン下に設置し、もう1つはキャビン出入り口下あたりに設置すると完璧だ。
自動排水式のデッキの場合ビルジポンプ不要の艇もあるが、一部燃料タンクや船外機真下部分は水が浸入する可能性があるので注意が必要だ。
配線時の注意とリモコンスイッチ
バッテリーに直接接続することが望ましいが、常時通電しているアクセサリースイッチを利用する方法もある。
また、メインスイッチ系統で配線するとオートスイッチが作動せず意味がないこともある。
3本のコードがオートビルジポンプから出ているタイプは、リモコンで操作することが可能だ。
リモコンパネルを設置すればコックピットから手動(強制)、自動の切り替えができるので便利だ。
また、2本のコードがビルジポンプから出ているタイプは、配線の途中にスイッチを入れるか、もしくはオートビルジスイッチを付ければ問題ない。
不思議な話がある。
夏場に多い現象だが雨が浸入したり、浸水した形跡がないのにビルジが溜まっている事がある。
これは、FRPが気温と湿度の関係で汗をかくのが原因なので換気をよくしておくことも忘れずに。
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