ウォッシュダウンポンプ
スポーツボートでアンカーロッカーが設置されていない場合、アンカーをよく洗わないでキャビンに置いておくことがある。
数日が過ぎるとアンカーから異臭が放つようになり耐えがたい臭いがキャビンに染み込んだ経験があることだろう。
これは、海底の汚泥の中のバクテリアがアンカーに付着しているために起こることなので、きれいに汚泥を洗い流すことが必要だ。
アンカーを海面で揺さぶり汚泥を払い除けている光景をよく見かけるがそれでは汚泥が残留してしまう。
また、フィッシングをしている際に動物性の餌を使用することが少なくない。
デッキの目地にこびりついた餌の残骸は、乾燥した後では洗い流すのに一苦労することだろう。
魚の血は当然のこと、弁当からこぼれたかす、ジュースの染み、デッキは汚れ放題と化す。
晴れている日の長い時間のクルージングは、これらの汚れを定着化させてしまう。
その前に簡単に洗い流す道具、それがデッキウォッシュやウォッシュダウンポンプといわれる洗浄用ポンプシステムである。
その仕組みは簡単である。
海水をポンプで汲み上げて高圧で放出しデッキの汚れを洗い流す便利なシステムだ。
水圧感知式スイッチがポンプに内蔵されており蛇口やスプレーノズルを開放することでスイッチが入りポンプが作動する。
逆に閉めるとポンプは停止する。
水圧は、ご家庭の水道水と同じくらいで45PSI程度のポンプが主流である。
20PSI程度がギャレーのポンプと考えるといい。
代表的なポンプメーカーとしては、RULE社、JABSCO社、GROCO社、ATTWOOD社、SHURFLO社が挙げられる。
システムに必要なパーツ
- ウォッシュダウンポンプキット
- 適度な長さのホース(耐圧ホース)
- ストレーナー(海水のゴミを除去する)
- スルハル(海底から取水する場合)
- 配線のための電気コード
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ストレーナーには、大きく分けて3種類ある。
ひとつは、ご存じビルジストレーナーだ。
ビルジには色々なゴミが落ちている可能性があるのでストレーナーは常識だ。
最近流行りの一体型ビルジポンプの場合は、ケース自体がストレーナーの役割を果たしている。
2つめは、インテークスストレーナーでスルハルと一体になっているものを指す。
比較的大口径の水取り入れ口に向いている。
最後に小型プレジャーボートに使用される代表的なストレーナーがインラインストレーナーと呼ばれるものだ。
ホース径が1/2インチまたは3/4インチのホースを使用するポンプに最適で外部から水を取り込む時に必要なアイテムのひとつだ。
枯れ葉や海藻などの不純物を取り除きポンプの寿命を永くする。
ストレーナーを装着しないでポンプを作動させていると吸水部分にゴミが付着しポンプの空回転を発生させ焼き付きの原因になるのだ。
ゴミが溜まってきたら透明ケースを外し中のゴミを取り除けばOK。
但し、メンテナンスの性質上、手が入らない様な場所に設置することは止めよう。
フレッシュウォーターポンプ
日常の生活においても人間は水がなくては生きていけない。
ましてキャビンのあるプレジャーボートにおいては、トイレの次になくてはならない水回り設備であるフレッシュウォーターポンプシステム(清水システム)について解説してみよう。
フレッシュウォーターポンプシステムは、プレジャーボートにとって一番広範囲に渡るシステムだ。
この配管過程は複雑なもので水が途中で漏れたりすると発見するだけでも相当な労力を必要とする。
ちょっと高級なアメリカ艇をモデルにして船に水を入れてからギャレーの飲用水になるまでの過程をシュミレートしてみよう。
- WATERキャップから水が入れられる。
- 清水タンクに水が溜まる。
- タンクから出た水はストレーナーを通って大きなゴミ(2〜3ミリメートル)が除かれる。
- プレッシャーポンプを通って水圧がかかる。
- 途中にアキュームレータータンクと呼ばれる圧力逃がしタンク(ゴム風船)があり一定の圧力を超えるとこの中が水で一杯になる。
- 温水器に入る前に逆流防止のチェックバルブ(一方通行)を通過する。
- 温水器の中を通過する。
- ギャレー蛇口の手前で清水フィルターを通過する。
- 晴れて蛇口から外界へと放出される。
さて、A〜Iまでの中で重要な項目をチェックしてみよう。
代表的な小型プレジャーポンプポンプの圧力によってアウトレット数が決まってくるわけだが下記が一応の目安となる。
*ホース径は1/2インチを基準とする。
- 12ボルト4アンペア OUT数 2
- 12ボルト8アンペア OUT数 3
- 12ボルト12アンペア OUT数 4
現在のウォーターポンプには、プレッシャースイッチといわれる圧力感知式のオートスイッチが標準装備されており、蛇口を閉めた状態にすると配管内の圧力が増すことで自動的にスイッチが切れる仕組みになっている。
それゆえ配管のどこかが緩んでいて水漏れしている場合は、スイッチが切れずにタンク内の水をビルジに変えてしまう。
ビルジが不思議に溜まる原因のひとつにも挙げられる。
代表的なポンプメーカーとしては、PAR社、SHURFLO社が挙げられる。
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アキュレームレータータンク
ちょうどゴム風船のようなものでポンプから出た水圧を一定にし、蛇口やシャワーからの水流をスムースにさせる。
また、ポンプや配管接続部分の寿命を伸ばすといわれている。
ウォーターヒーターシステム
小型プレジャーボートには、6ガロンタイプの電気式/エンジン熱兼用のウォーターヒーター(温水器)が比較的設置しやすく、外国艇などには標準装備の船が数多く見られる。
残念ながら電気式(陸電または発電器)仕様のものが多いためあまり活用されていないのが現状だ。
120ボルト換算で最低1000W程の電力を消費する。
但し、エンジンの熱を利用するヒートエクスチェンジャーがつけられる温水器では、生温かい水を出すことは可能だ。
代表的な温水器メーカーには、SEAWARD社、TORRID社、RARITAN社が挙げられる。
インライン清水フィルター
ご家庭の蛇口に設置する浄水器と考えればいい。
飲料水として安全に使用できるよう水をフレッシュにしミクロン単位の沈殿物やバクテリアを除去するシステムである。
寿命は約1000ガロンで1年間が交換の時期と考えるといい。
シーズンオフの冬のメンテナンス
冬の気温が氷点下に下がる地方に保管している船の場合は次の注意が必要である。
フレッシュウォーターシステムのポンプや配管に残った水は、冷やされて氷になると膨張する。
結果として配管部分にダメージを与え水が漏る原因となる。
通常の水道管ですら破裂する。
そして寒い地方では春になるとビルジが不思議に溜まる現象に襲われる。
通常オーナーは、原因が分からずに夏が過ぎていく。
直そうと思って配管をたどっても何処に亀裂が入ったのかはプロでも判断しかねる。
そうなる前にこうしよう。
シーズンオフの前に自動車のラジエーター用プロピレングリコール(不凍液)を薄っらと着色される程度に清水タンクにいれておく。
その後、水をよく循環させ配管の隅々まで行き渡らせれば冬のメンテナンスはOK。
シーズン前によくフラッシュさせることを忘れると色付きのシャワーを浴びることになるので注意しよう。
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